【初心者向き】競馬の手引き~一番大事な「仕組み」を語る~
競馬の手引きの続きを書きたい。「競馬の魅力」について書いた第1回は望外の好評価をいただいた。ありがたい話である。
今回は競馬を深堀する回。題して「競馬の仕組み」についてである。
私は普段、様々な角度から予想のアプローチを仕掛けるが、その核となる部分がこの「競馬の仕組み」だ。今回の手引き全4回のなかで一番大切な内容である。
今回 「競馬の魅力」
2回目「競馬の仕組み」←今回ここ
3回目「予想の手引き」
4回目「馬券の手引き」
競馬の歴史なども話すので結構地味かもしれないが、初めて競馬をする人ほど知っておいた方がいい内容を厳選した。どうやって予想に役立てるかも含めて話すので、ぜひ聞いてほしい。
「ダービー」とは何か
競馬を知らない人でも、「ダービー」を聞いたことがある方は多いのではないか。
かくいう私も知ってはいたが、そこにかけられた人々の思いや、重みを一ミリもわからないままに競馬を始めていた。多くの競馬初心者もそうかもしれない。
まずはここから入らなければならない。
ダービーの話をする前に、競馬の歴史に触れる。それがダービー誕生と、競馬の意味を知る第一歩になる。私もそこまで詳しくないので簡単に説明する。
現在の競馬の基礎はヨーロッパ(特にイギリス)で生まれたとされる。日本には形が異なる競技も存在したようだが、ここでは割愛する。ググってくれ。
西洋競馬が最初に日本に入ったとされるのは1860年横浜とのことで、外国人居留地で行われていたそうだが、これもあくまで豆知識だ。
国で競馬をやるきっかけとなったといえるのは、個人的には日清戦争、日露戦争だと思う。当時の日本の馬は、今知られているようなサラブレッドではなく、体高が低い上に走らせてもそこまで速い品種ではなかった。
それで海外からサラブレッドを輸入し、交配させるようになった。この過程で優秀な馬を生産しようという狙いだが、その優秀な馬を選定するのも競馬の役割だった。
だが、馬は生産して育成するだけでも莫大なお金がかかる。だから賞金が必要になる。そのお金は国から出ていた、というわけだ。そしておそらくは当時国が黙認していた馬券も収入源としてあったのかもしれない。
日本における馬券の文化は先に挙げた外国人居留地にもあったそうだが、射幸心を煽るとして、国から禁止されたり解禁されたり紆余曲折を経ている。今日の政治家による射幸心を煽るの言説は別に今に始まったことではないのだ。
レースの形式は、当時競馬先進国だった(というか今でも競馬でトップクラスの国)イギリスを参考にしており、ダービーをはじめオークス、皐月賞、菊花賞、桜花賞といった「クラシックレース」(3歳馬のみが出走できる格式のあるレースの総称)もイギリスのレースを参考にしている。
この辺りは掘れば掘るほど面白い話が見えるのだが、私も掘り切って解説できるほど詳しくはないので泣く泣く割愛。気になる方は自分で調べてほしい。
大事なのは、優秀な馬を選定するために競馬が生まれ、その優秀な馬を選定する1番のレースがダービーということだ。
ダービーの意味と条件
ダービーは先に語ったようにイギリスにもあるし、競馬開催国は大体あると考えてよい(もしかしたらない国もあるのかもしれないが、そこは知らん)。つまり、各国の「ダービー馬」といえば、その国のトップホースということになるのだ。
さて、日本ダービーにはいくつか出走条件がある。ここで挙げたいのは2点。
・3歳馬であること
・セン馬でないこと(セン馬:去勢された牡馬)
前者は各世代で行うレースであること。馬の肉体がそれなりに成長していながら、かつできるだけ早い段階ということで3歳と限定されているらしい。
そして長々と話した通り優秀な馬を「生産」する目的があるので、生殖能力を失った馬には出走権がない。
競馬は昔こそ軍事目的があったのだろうが、今では娯楽だとか国や馬産地の収入源としての地位を確立している。
そして日本ダービー勝ち馬である「ダービー馬」という称号には、「世代トップ」の意味が含まれると同時に、馬にとっては競走引退後の未来が一気に明るくなる「種牡馬への特急券」の面もある。
特に牡馬は引退後の未来が悲しいものになるケースが非常に多い分、この効果は絶大。必ずしも種牡馬になれるわけではないが、グッと近づくのは間違いない。
このようにダービーは馬にとって是が非でも勝たねばならないレースであり、その馬を育てた人や所有者も、馬のためにも、そして「ダービー馬を育てる(所有している)」という一生に一度あればかなりの幸運とされる名誉(そしてその注目度から得られる実益)があり、一番大切と言っていいレースなのだ。
ちなみに日本において馬は一世代で7000頭ほど生産されている。確率にして、一年で1/7000=0.014%である。どれだけ難しいか、想像しなくてもわかるだろう。
ダービーは本当に大切なレース。それは競馬歴を重ねれば重ねるほど実感するようになる。
日本ダービー、古馬GⅠを基準に考える今日の日本競馬
実は日本のダービーは日本ダービーだけでなく、東京ダービーや高知ダービーなどいくつかあるのだが、今回は中央競馬のダービーである、「東京優駿」日本ダービーを主軸とする。
ちなみに東京優駿は日本ダービーのことであって、南関東競馬の「東京ダービー」とは異なる。
それはさておき、日本ダービーで重要なのが2点。
・芝のレース
・距離は2400m
なぜこれが重要かというと、まず日本ダービーで勝つには、この2つに対応できなければならないからだ。
当たり前の話ではあるが、ダートで最強でも芝で強いとは限らない。同様に1200m最強でも2400mに対応できるとも限らない。
先ほど話した通り、3歳馬の大目標はダービーで、次点に他のクラシックレースといった具合になる。
そのどれかに引っかからない馬やレースはどうしても淘汰されてしまいやすい。
なぜなら、競馬は優秀な馬を選定することが第一にあるから。これは軍用目的だった時代もそうだし、より大きなレースで勝ちやすい馬を生産している現代でも同じだ。
となれば、芝以外のレースや、2400mと真逆のレース、つまり短距離戦はどうしてもレース数が少なくなってしまう。
事実、3歳限定の重賞は、1600〜2000、ないし2400m戦はそこそこ数があるのに、1400m以下となると一気に数が減る。ダートにしても3歳限定だと2レースしかないのだ。
ダービーから条件が外れるほど重賞は少なくなるし、出走する馬のレベルも低くなる。
当然だ。強い馬であるなら多少無理をしてでもダービーを目指すのだから、条件に近いレースほど強豪が出てくる。
特に2、3歳戦は、1200mに近づくほどレベルは低くなりやすく、1600mで一段二段レベルが上がり、2000mあたりは1600mより少しハイレベルという印象を持っておきたい。
ダート馬は芝と比べてもレース数の少なさという意味で苦しい。最近になってようやく三冠レースが地方競馬で整備されたので中央のダート馬は少しレースの選択肢ができてマシになったが、それでも選択肢は少ない。
それに、ダートは1800mあたりと1200mあたりの路線でも露骨に優劣が激しく、明らかに1800m路線の馬たちの方が格上となる。
これもダート三冠レースが1800m付近の距離でのレースになるからでもあるし、ダートの短距離馬がとてもダービーに適性があるとは言えないからでもあるだろう。
そしてこの構図は古馬(4歳以上、あるいはダービー後の3歳を含む)になっても大きく変わらない。やはり賞金がGⅡ、GⅢと比べても全然違うのでGⅠが最大目標になるのだが、このGⅠの多くが中距離(2000m)以上なのだ。
特に東京で行われるジャパンカップ や天皇賞(秋)、中山で行われる有馬記念はどれも賞金がえぐいので実力馬が集まりやすい。日本のトップたちを見るのであれば、この3つを見ておけば間違いない。
お金について忌避感を抱く日本人は多いように思うが、競馬においてお金を稼がないのは率直にいって悪だ。お金を稼げなければ馬産は成り立たないし、現実的に馬産に関わる人も馬も息絶えてしまう。
馬産はきれいごとだけでは絶対に成り立たない。悲しいがそれが現実だ。
当然命が一番大事なのは明らかだし、それが守られるのが前提だ。しかし、可能な限りの努力をし、下調べをするのもホースマンとしての義務だ。彼らは金の亡者と言われてでも馬の未来を切り拓かなければならない。同情するなら金を渡してやれ、という話なのだ。
話が逸れた。元に戻す。
距離別の短距離重賞は2、3歳の頃よりは増えるが、それでも1600mのマイル戦や、中距離戦と比べると数が少ない。マイル戦も数はあるが、それでも中距離にはやや劣る。それは中距離が今の競馬のトレンドでもあるからだ。
ちなみに2600m(人によっては2500m以上)の長距離重賞は現在、中距離に比べて格が低くなった印象。それは世界のG1の数を見ていても同様で、だいぶ淘汰されてきた。
今のトレンドは1600〜2000m。実はフランスのダービーが2400mから2100mに短縮したりと、2400mは長いという風潮が生まれつつあるのだ。
そのうち日本のダービーも2400mから短縮する時が来るのかもしれない。
まあ見てる感じ、東京でそれをすると、コース形状的に猛反発が各所で起きそうだが。この理由はまたどこかで話せたらいいなと思う。ピンとこなくて気になる方は、東京芝2000mがどんな不公平コースか調べるのをオススメする。それでなんとなく察しがつくかもしれない。
クラスの意味
選定という意味でクラスにも触れておこう。
日本競馬にはクラスという階級がある。
大きく分けて5つ。
・新馬、未勝利
・1勝クラス
・2勝クラス
・3勝クラス
・オープン
ダービーはもちろん一番格上のオープンクラスにあたる。なお、オープンクラスにも格の違いがあり、力関係はこんな感じ。
オープン≦リステッド<GⅢ≦GⅡ<<GⅠ
これぐらいのイメージでいい。実際にはGⅡやGⅢにもレースごとに格があったりするが省略する。一旦はこれだけで覚えてほしい。
新馬・未勝利戦は2、あるいは3歳しか出走できない。つまりここで勝てなければ1勝クラスなどに上がれない(なお、格上挑戦は可能だが、当然レベルが上がるので勝つのは難しい。全くないわけでもないが)。
この時点で半分近くの馬が選定から外れると見ていいだろう。競馬は最大18頭で競うわけで、そのうちの1頭、ごく稀にある同着で2、3頭しか勝ち上がれない。新馬戦も未勝利戦も無限にあるわけではないし、やはり勝てない馬は多く出てしまう。
1回勝てば上のクラスに上がれるが、冷静に考えて10何頭中の1頭になるのは難しい。
そこからさらに1勝クラス、2勝クラス、3勝クラスと上がるわけだが、3勝クラスに上がる時点で世代の上位10何%という世界だ。
年に100回あるかどうかの重賞を勝つだけでもどれだけ狭き門か、という話である。重賞を勝つことがどれだけ大変か、これでお分かりいただけただろうか。
ちなみにこれは古馬の話。2、3歳世代は2、3勝クラスがないので、1勝クラスを勝った時点で世代のオープンクラス入りとなる。
しかし、そこで結果を出せなければ、ダービー終了時点の獲得賞金額によって、2、3勝クラスに割り振られるのだ。
そういう理由もあって、重賞を除く世代のオープン戦は実質2勝クラス相当と考えてもらって差し支えない。
ここを勘違いして馬柱(馬の成績表)を見てオープンを勝ってるからこの馬強い、と判断する方もおられるだろうが、そういうわけではない点に注意する必要がある。
このクラス階級にしても優秀な馬たちを選定するシステムになっていることが窺えるだろう。
競馬の一年
これも知っておくと馬柱を読む時の解像度が上がる。というかここまでの話がなぜ予想に必要かと言われれば、馬柱を読む時の解像度を上げるためでもあるのだ。
競馬予想をする際に、ほとんどの人間は馬柱を見るはずだ。でなければその馬がどんなレースに勝ち、どんなレースで負けたのかわからないからだ。
馬名や枠番の出目で競馬するのは自由だが、それをするなら宝くじやパチンコを打つことを勧める。
ギャンブルという面で見れば、競馬、ないし競艇競輪は自分で賭け金を定められる(=最大負け額を自分で設定できる)娯楽なのだから。この点は有効活用した方がいい。
馬柱を見ればわかる通り、競馬は一年中行われる。人間にとって一年の区切りは年末年始だったり3月末だったりするが、馬にとってはダービーのある5月末が区切りとなり、6月頭付近が始まりの月となる。それぞれ話していく。
【6月】
まだ競馬もオンシーズン。最近はだいぶ暑くなってきたが、それでも有力な2歳馬がデビューする時期だ。特に最近は強い2歳馬の早期デビューがトレンドとなっており、新馬戦の時期も予想のファクターとなりうる。
【7、8、9月】
競馬的にはオフシーズン。なぜなら馬は暑さが苦手だからだ。相対的に牡馬より牝馬の方が走るとされている時期。これは体の表面積の問題だったり、ホルモンなどの関係からなど諸説ある。
2歳馬にとってはデビューする馬が続々出てくる時期ではあるが、無理をさせたくない陣営も多く、10月にデビューを先延ばしにするケースも少なくない。
特に10月からはダービーの舞台である東京競馬場の開催が始まる。ダービーを見越してここを狙う2歳馬も多い。
【10、11月】
一年でトップクラスに競馬が盛り上がる時期。3歳馬にとっては最後の三冠レースである菊花賞、秋華賞が開催されるし、先に挙げた天皇賞(秋)、ジャパンカップもある。見逃せない月間だ。
それは2歳馬にも当てはまり、有力馬はやはりここで名前を挙げてくる。12月の2歳GⅠのために賞金稼ぎを狙う馬たちも多い。
【12月】
一応競馬もここで一区切りに。寒くなると芝を走るのにも力が必要になってくる。スピード型の馬よりパワー型に優位性が生まれる時期でもある。2歳GⅠや有馬記念がある月で、香港のGⅠも開催されるので遠征に行く有力馬も出てくる。今や競馬はグローバル。ガンガン他国に遠征をかけるのがトレンドだ。しかし日本的には競馬もオフシーズンに突入する。
【1、2月】
馬は1月になると馬齢が一つ上がる。元2歳馬は3歳馬に上がり、3歳馬は本格的に古馬の仲間入りだ。競馬的にはオフシーズンなので有力馬の出走は少ない。2月になってようやく強い馬が出やすいGⅡもぽつぽつと開催される。それでもGⅠはほとんどない。
【3月】
競馬的にはだんだんシーズンとなる。クラシックの出走権をかけた「トライアルレース」が続々と開催される時期。3歳馬にとっては賞金加算や権利取りに明け暮れる月間でもある。月末からは短距離GⅠが開催され、ここから春のGⅠ戦線が始まる。
【4、5月】
日本競馬が特に盛り上がる時期。3歳馬も古馬もGⅠが目白押しだ。そして3歳馬にとっては生涯一度の舞台が並ぶ。そしてダービーまで駆け抜けていくのだ。
この辺りの流れは知っておいた方が馬柱を見る際にも役立つ。覚えておきつつ、次の競馬の手引きに行ってほしい。
次回は予想としての競馬について。予想の主軸となる手法を紹介していくが、ド基礎の話になるだろう。数ある予想法のなかで初心者がまず考えるべき手法を挙げていく。
調教とかパドックとか血統とか、予想には様々な手法があるが、初心者にとっては何を見ればいいのかわからんのが正直なところだろう。だからまずは基礎中の基礎にあたるところを紹介しようと思っている。
個人的にはそれだけで予想としては事足りるが、人には好みがある。ただ、応用的な予想方法は基礎を固めてからでいいと思う。
ライター名「夜桜 ほとり」
バイオテクノロジー系の分野で大学院卒業後、何を血迷ったのかSEに転身。でもなんか違うと思い、競馬メディアの編集に。現在は編集を脱退、馬を中心としたフリーの物書きとして活動中。
※当サイトの記事で書かれている予想は、的中を保証するものでもありません。馬券は自己責任でお願いいたします。
今回はかなり長くなってしまった。まさかの6000文字超えである。一日で書くにはまあまあハイカロリー。明日の展望は短めにいきたいものだ。



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